
はじめに|なぜ料金交渉は断りにくいのか
イラストの相談でほぼ必ず出てくるのが「もう少し安くなりませんか?」という一言。ありがちな場面ですが、下手に応じると品質やモチベーションが下がり、長期的には自分の価格帯を崩してしまいます。
大切なのは、相手の事情を尊重しながら自分の条件も守ること。そのために必要なのが「感謝 → 理由 → 代替案」というフレームです。本記事はこの黄金パターンを軸に、現場でそのまま使える言い回しを豊富に用意しました。
この記事で得られること
- 値下げ交渉を角を立てずに断る話法
- 修正や利用範囲拡大など場面別テンプレ
- トラブルを未然に防ぐ事前設計(料金表・規約・FAQ)
料金交渉が起こりやすい典型シーン
実務で頻発するのはこの3つ。パターンを掴めば、対応はぐっと楽になります。
- 初回見積もり: 予算オーバー/相場感の違い
- 修正の段階: 仕様変更多発/回数超過の無償要求
- 利用範囲拡大: 二次利用・商用化・広告出稿などの追加
それぞれの場面で「断る理由」が異なります。次章の3原則と合わせて、ケース別の会話例に落とし込みます。
角が立たない断り方の3原則
断るときは以下の順序を一貫させます。心理的負担を最小に、関係性はプラスで終わらせましょう。
- ① 感謝: 相談=期待の表明。まずは歓迎を伝える。
- ② 理由: 品質維持・工程・規約・制作スケジュール等、納得可能な根拠を短く。
- ③ 代替案: 範囲調整/納期調整/追加特典(SNS画像等)でイエスに近いノーを提示。
この順序を崩さない限り、強い拒絶感は生まれにくくなります。
ケース別:会話例&コピペ用テンプレ
各ケースで会話例 → コピペ用テンプレの順に掲載します。必要な箇所だけ差し替えて使ってください。
Case 1|初回見積もりでの値下げ交渉


その代わり、SNS用の宣伝画像(1点)を追加できますが、いかがでしょうか?

ご相談ありがとうございます! 本件の工程と品質を維持するため、提示価格でお願いできれば幸いです。 その代わり、納品後のSNS用宣伝画像(1点)を追加でご提供可能です。ご検討ください。
Case 2|修正回数の超過(大幅変更)


コストを抑える案として、背景を簡易版に/ポーズは腕のみ調整 なども可能です。
ご指定ありがとうございます。今回の内容は方向転換に該当するため、追加お見積りのご相談をさせてください。 代替案として ①背景を簡易版に ②ポーズは腕のみ調整 でしたら現行範囲で対応可能です。ご希望をお知らせください。
Case 3|著作権譲渡・二次利用の値引き要望


予算に合わせ、期間限定/媒体限定のライセンス案もご提案可能です。
ご計画の共有ありがとうございます。二次利用は収益化の幅が広がるため、通常制作とは別にライセンス料を設定しております。 ご予算に合わせ、期間限定・媒体限定のライセンス案もご提案可能です。ご希望の範囲をお知らせください。
Case 4|納期短縮のお願い(特急料金)


スケジュール確認のうえ、特急対応(+◯%)でしたら可能です。 通常納期は◯日後となります。ご希望のプランをお知らせください。
Case 5|予算が大きく乖離している場合


ご相談ありがとうございます。現行仕様では難しいのですが、背景簡易化・SNS向け解像度の限定など、予算内の代替案をご提案可能です。 重視されたい点(背景/解像度/納期)をお知らせください。
よくある失敗とNG言い回し
NG:曖昧な拒否
「厳しいです」「難しいです」だけでは、交渉の余地があると受け取られやすい。
→ 理由と代替案をセットで。
NG:感情で反応
感情的な文面はスクショで拡散のリスク。
→ テンプレを使い、事実ベースで淡々と。
NG:無償対応の積み重ね
“今回だけ”が続くと、それが新しい標準に。
→ 規約と価格表でラインを共有。
GOOD:事前に線引き
修正回数・二次利用・特急料金を明文化。
→ 交渉自体が減り、断りやすくなる。
事前準備|交渉自体を減らす仕組みづくり
価格交渉は「仕組み」で大幅に減らせます。以下の3点はテンプレ化しておきましょう。
- 公開料金表: ベース価格/修正回数/追加料金/特急料金を明記
- 簡易規約: 著作権/二次利用/実績掲載/再配布禁止
- FAQ: よくある質問を事前回答(納期目安・支払い方法・キャンセル等)
規約テンプレ(抜粋/コピペOK)
【修正について】ラフ1回/清書後1回まで無料。以降は1回あたり◯円。 【著作権】著作権は作者に帰属。二次利用・商用利用は別途ライセンス費が必要。 【実績掲載】ポートフォリオ・SNSでの掲載可(非公開希望は事前申請)。 【特急料金】通常納期短縮は+◯%。事前に可否と加算率をご案内します。
よくある質問(FAQ)
Q. 値下げ交渉を断ると依頼が来なくなりませんか?
A. 一部は離れますが、誠実に理由と代替案を示す対応は信頼を生み、むしろリピートにつながります。
Q. 実績づくりのために安く受けるのはアリ?
A. 目的が明確ならアリ。ただし恒常的な値引きは避け、期間・枠・条件を限定しましょう。
Q. 海外クライアントの交渉はどうする?
A. 仕様の書面化・時差考慮・前払い比率などを明確に。範囲の固定が日本以上に重要です。
まとめ|誠実な断り方が次の依頼を連れてくる
断る=関係が終わる、ではありません。感謝→理由→代替案の一貫した対応は、相手に「プロだ」と感じてもらう最短ルートです。条件を守りながら誠実さを積み重ね、価格ではなく信頼で選ばれるイラストレーターを目指しましょう。